「食べるのに時間がかかる」、「食べ物で遊び、毎食が憂鬱」「食べたり食べなかったりムラがある」、こんなお悩みはありませんか。
1日3度や4度の食事、メニューを考えたり、買い出しに行ったり、せっかく準備しても思うように進まないことが続くと、出口が見えずにつらいですよね。
これらのお悩みに共通していることは「どうして食べてくれないのかが分からない。解決方法が分からなくて辛い」ということ。お子さんの行動の理由を知り観察してみると、解決の糸口がつかめるかもしれません。
ここでは代表的な保護者のお悩みから、「うちの子はどうして食べないの?」という理由を探り、お子さんを観察するポイントを見ていきましょう。
もくじ
食べるのに時間がかかる
食事の時間の目安は30分くらいです。それ以上になると集中して座っていられなくなったり、最初に食べたものでお腹が膨れてきたりして、食べたい気持ちがなくなってしまいます。食べることを強要してしまわないためにも、お子さんの状態や環境を観察してみましょう。
お腹がいっぱい
1食と1食の間の時間が短かったり、間食や水分に甘いものが多かったりすると、次の食事の時間までにお腹が空かないことがあります。まずは、次の3点をチェックしてみましょう。
- 1食にどのくらい時間がかかっているか
- 水分やおやつは、何時頃どんなものをどのくらい食べているか
- 3食とおやつの食事の時間帯
上手に食べることがむずかしい
お子さんによって、食べたり飲み込んだりする口腔機能に課題がある場合、食べ物の硬さや形によって食べづらく、時間がかかることがあります。そんな時は、次の点を観察してみましょう。
- お子さんの好んで食べる食品やメニューをメモしてみる
- お子さんの嫌いな食品やメニューをメモしてみる
集中して座るのが難しい
集中して座るのが難しい時は、お子さんが姿勢を保つのが苦手な場合や、椅子や机の高さや形が合っていなかったり、気が散るもの(音・掲示物など)が近くにあったり、食事のメニューによるものであったり、食器が使いづらいのかもしれません。次の点を観察してみましょう。
- 食べる時にあぐらをかいたり、足が床から浮いていたりしていませんか
- 食卓周りや、お子さんの座っている正面に気の散るものがありませんか
- テレビの音などに反応している様子がありませんか
- 集中して座るときとそうでない時のメニューの違い
- 食器は立ち上がりのあってすくい易い形ですか
盛り付ける量が多い
お子さんが少し疲れている時や、苦手な食べ物が目の前に沢山あると、食べるのが億劫になってしまうかもしれません。1回の量を2回に分けて空っぽにできた!という感覚を大事にしてみたり、苦手なものはほんの一口だけ盛り付け、「できた!」の気持ちを大事にしてあげるといいかもしれません。
食べ慣れていない
大人と違い、子どもにとっては初めての経験がいっぱいです。食材や料理を見るのも、食べるのも、匂いも色も、少しずつ経験していきます。この料理はこんな味だな、この食材が入ってるな、この野菜はこんな色で、こんな形、食感だな、という風に。
大人も初めてのことには尻込みするように、子どもにとっての食べ物も同じです。同じ食材でも、千切りからいちょう切りのように形が変わると、同じものだと認識できないこともあります。少しずつ慣れて行けるといいですね。
遊び食べをする
遊び食べとは、食べ物を手で掴んだり机に擦り付けたり、およそ離乳食中期~後期の頃に始まる、探索行動のこと。大人から見ると食べ物で遊んでいるように見えて困ってしまいますが、食べることの練習をする大事な時期です。
食べ物の情報をキャッチしたり、食べ方の練習をしている
食べ物をぐちゃぐちゃにしたり、少し高いところから落としてみたり、机に擦ってみたり。この行動を通して、子どもは食べ物の感触や食べる時の姿勢、スプーンと食べ物と口との距離感や動作を学んでいく、大事な時期です。探索行動は時間を決めて出来るだけ自由にやらせてあげるのがいいですが、少し年齢があがって動作が上手になっても続く場合は、どんな時にどのように遊び食べをするのか、観察してみるといいですね。
また、机が汚れたり、保護者のストレスになる時は、以下の予防策も試してみてくださいね。
- トレイに乗せる、机の下にシートを引く
- 沢山盛り付けず、少量にする
- 保護者もエプロンをする
- 時間を決めて、おしまいと食器を下げる
食べたり食べなかったりムラがある
食べムラとは、食事を摂る量が毎回大きく異なることです。保護者は悩むことが多いですが、毎食決まった量を食べていなくても、1週間単位で食べられていれば、大きく心配することはありません。保育園や幼稚園、学校ではしっかり食べていたり、夜になると疲れて食べる量が少なくなることもあるかもしれません。ムラをなくそう!と思わず、外で頑張って食べたことをぜひほめてあげて下さいね。お子さんにもムラがある理由があります。
食べられる料理や食材によるもの
食べる時のメニューや食材に、お子さんの決まりはありませんか。
まずは食べられている料理や食材を観察してメモしてみます。味つけ、柔らかさ、使っている食材の傾向など、お子さんの決まりごとが分かるかもしれません。
食事の環境によるもの
給食や外では食べられるのに家ではなかなか食べられない等、食事そのものというより、雰囲気や環境が関係していることがあります。お友達のいる楽しい雰囲気でつられて食べられる等の理由があります。たまには家での食卓の環境をガラッと変えてみるのもいいかもしれません。いつものメニューをお弁当箱に入れてみたり、ピクニックシートの上で食べたり、椅子にお気に入りのぬいぐるみを座らせて賑やかな食卓にしてみるのもいいですね。
お腹がいっぱい
食べたい時に食べさせたり、遊びながら食べることが当たり前になると、食事の時間という概念が曖昧になってしまうので、食事の時間と食事時間の長さを決めていきます。
食事時間は、3食と間食の4回以外は、お茶や水など、味のついていない、糖分の入っていないものにしましょう。
食事時間の長さについては、食べなかったら片づけることを繰り返します。
食事の時間に食べておかないと食べ物は出てこないことを少しずつ覚えていきます。
大人は「この後忙しくなるから今は少し多めに食べておこう!」など思考で食べる量を調節できますが、子どもは見通しを持てなかったり本能(食欲)に忠実なので、大人には「食べムラ」に見えてしまうこともあるかもしれません。つい忘れてしまいがちですが、大人も、「昨日は食べ過ぎたから、少な目でいいかな」という日があります。食欲にムラがあるのは、実は自然なことなんですよね。
著者プロフィール
大竹友里恵 管理栄養士
大学卒業後、製薬会社MRとして勤務。先天性食道閉鎖症・ダウン症がある息子の誕生や、育児で自身の体調を崩したことをきっかけに、体質や体調、それぞれのライフスタイルに合わせた【食選び】が必要だと気付く。
息子の食事のために自身が苦労し辛い思いをした経験から、コラムや講演でぺースト食や形態食を含めた栄養・育児経験の情報を発信し、個別相談も行っている。そのほか、しょうがい児の学びや就労を考えるなど、子育てと併せて精力的に活動中。
活動テーマは「専門家と一般の人を繋ぐ、橋渡しの専門家」
参考文献
・藤井葉子「発達障害児の偏食改善マニュアル」山根希代子監修,中央法規(2019)
・田村文誉 他「上手に食べるために」金子芳洋・菊谷武監修,医歯薬出版株式会社(2005)
・中田馨・クリハラタカシ「イヤイヤ期専門保育士が答えるこどものイヤイヤ」実務教育出版(2020)
できることから少しずつ
いかがでしたか、「うちと同じ!」「ちょっと似てるかも」というお悩みはありましたか?
ここに挙げたものを全部実践する必要はありません。
まずはお子さんがどんなタイプか、当てはまりそうな所があるかチェックと観察をしてみてくださいね。なにか1つでもヒントになれば嬉しいです。