食べられない子の問題に、関心をお寄せいただきありがとうございます。
「食べられない」というと、多くの方は食べ物がないから食べられない状況を想像すると思います。もちろんそういった状況の子のことはよく知られるようになってきましたが、一方で、「食べ物が目の前にあっても食べられない子」がいることはほとんど知られていません。
食べられない子は、好き嫌いをしているように見えたり、保護者のしつけが悪いと誤解されがちです。その中に、実は食べる機能の獲得が上手くいかなくて困っている子・悩んでいる保護者がいることを知っていただきたいのです。
一方で、保護者自身もわが子が食べてくれないときにどう対応したらよいのか、情報がありません。もちろん、一般的な食育というアプローチで、時間をかけて食べ物を受け入れられるようになる子がほとんどです。しかし中には、食べられない理由を放置したまま、その子に適さない対応(一般的な対応)が繰り返されることで、食べること自体を拒否するようになってしまう子もいます。
子育ての中で、「知らなかったがゆえの誤った対応」がずっと繰り返されてしまっているのです。
このページには、食べられない子の問題を理解いただくために、おすすめのサイトをまとめました。
見えない子・聞こえない子がいるのと同じように、食べられない子もいるということを知っていただけると嬉しいです。子育てを支援してくださる皆様が「食べられなくて困っている子とそのご家族がいる」と知っておいてくださることが、早期支援へつがるきっかけになると信じ、このサイトを運営しています。
はぐもぐ編集長 小浦ゆきえ
もくじ
保護者の悩みを知る
乳幼児栄養調査
厚生労働省が行っている調査(2020.09現在 平成27年度版が最新) 。乳幼児の食事に関する様々な項目が調査されています。子どもの食事に困っていることの調査では、特に悩みがない保護者は2割以下。多くの保護者が「食べないこと」(偏食する・むら食い・遊び食べ・少食・関心がないなど)に悩んでいる状況です。
NHK ハートネット: 発達障害のある子どもの“偏食” その実態と解消へのヒント
発達障害を含む自閉症スペクトラムは、乳幼児の時点で診断されることはほとんどありません。そのため、保護者は育てにくさを感じつつも、一般的な育児情報を参考に子育てすることになります。お子さんの食べない理由がわからずに、お子さんを追い詰めたり、保護者自身も苦しんでしまいます。
TED / The Illusion of Feeding: It’s Bigger Than Just A Bite!
お子さんが食べないという状況を経験した保護者のプレゼンテーション。
TNC こどもにピタッとプロジェクト
理解・対応の参考になるサイト
はぐもぐ
はぐもぐは食べない子の支援情報サイトです。保護者の過剰な不安は小さく、でもサポートが必要な子は医療・療育へつながれるよう情報提供を行っています。紹介冊子の無償提供も行っていますので、ご希望があれば問い合わせフォームよりご連絡ください。
つばめの会
飲まない・食べない、経管栄養などで成長発達に問題を抱える乳幼児と、その家族の会。食べない子には、障がいや病気などによるものから、原因不明の場合まで、さまざまなケースがあります。
つばめの会さんは、SOSアプローチのレクチャー動画の日本語吹き替え版を作成されています。
神奈川こどもNICU 早産児の育児応援サイト
対象 低出生体重児保護者、保育者
神奈川こども病院のNICUの先生方が作成された小さく生まれた子の育児応援サイト
サイトより抜粋>
早く小さく生まれると、偏食や好き嫌いが多いの?
- 飲んだり食べたりすることについての課題は、「25週未満で生まれたこどもでは37週以降で生まれたこどもの3.6~5.2倍多い」という報告があります。
- 早く生まれたこどもの親の5~8割が、こどもに食べさせるためにご褒美をあげたり、ながら食べをさせたり、食事の中身について心配しているという報告があります。
- 飲んだり食べたりすることについての問題は、月齢が進むと徐々に改善するとも報告されています
PFD(乳幼児摂食障害)に対応している医療機関(代表的な施設)
神奈川県立こども医療センター 偏食外来
新生児科の大山牧子先生が担当する偏食外来は、年齢相応の食事を食べたがらないお子さんを対象にした外来。来院診療は原則3歳未満のお子さん(経管栄養利用中のお子さんや、発達障害、その他の病気のあるお子さんも可)とご家族が対象。
たつのシティタワークリニック
昭和大学で摂食外来を担当されてきた小児科医 田角勝先生のクリニック。乳幼児摂食障害(乳幼児食行動発達)の相談に対応してくれる。
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック
昭和大学ご出身の歯科の田村文誉先生を中心に、口腔機能発達から偏食までサポートしてくれる。
福岡歯科大学医科歯科総合病院
小児科の一宮先生を中心に、子どもの発達から口腔機能発達まで医科歯科連携でサポートしてくれる。
PFD(乳幼児摂食障害)に対応している医療機関(一覧)
海外での取り組み
feeding matters
摂食困難な子供たちを支援し、家族のための支援システムを構築するために、設立された組織。国際的に有名な摂食専門家によるセッションなどが行われる国際会議を開催したり、小児摂食障害の子供たちの評価と治療のための根拠に基づく教育を提供したりしている。専門職だけでなく保護者が学ぶこともできる。
SOS Approach
児童心理学者 Kay Toomey (ケイ・トゥーミー)博士によって 30 年以上前に開発された SOS Approach to Feeding program。
「食べられない」という現象の裏にある様々な理由(器官の能力・感覚処理・学習・行動・認知・栄養・環境など)について掘り下げて評価していきます。
専門職向けのプログラムの他、保護者向けの資料やワークショップも用意されている。
保護者向け動画の日本語版を「つばめの会」さんが作成し、公開されています。<つばめの会作成 SOS Approach保護者向けワークショップ日本語版>
対応の参考になる本・資料
子どもの偏食外来
著者:大山牧子
出版社:診断と治療社
いつもの小児科外来や健診で役立つヒント
編著者の大山牧子先生は、新生児科の医師でありながら神奈川県立こども医療センター偏食外来を開設され、多くの食べない子の診察・対応を行っています。この本では、食べる力の発達のステップや、評価・調整といった対応の流れはもちろん、事例も多く取り上げてあり、偏食や食べない子の相談を受ける上での基本的なステップを理解できる内容になっています。
発達障害児の偏食改善マニュアル
編著者:藤井葉子
監修:山根希代子
出版社:中央法規出版
手強い偏食さんの食べられない理由&対応を探りたいときに
編著者の藤井葉子さんは、偏食のお子さんへの対応で有名な広島市西部療育センターの管理栄養士さんです。この本には、これまでたくさんの偏食の子が食べられるように変身してきたノウハウが詰まっています。
支援をする専門職向けに書かれた本ですが、とても分かりやすいので、「自宅でできることをがんばってみたい」という時にも役に立つと思います。食事の状況から、その子が食べられない原因を推察したり、原因別の対応の仕方が紹介されています。
タイトルに「発達障害児の」とついていますが、発達障害の有無に関わらず、「どうして食べないの?」と思い悩んでしまったときの参考になります。
食べない子が変わる魔法の言葉
著者:山口健太
出版社:辰巳出版
偏食や小食など、食べない子のご家族におすすめの一冊
著者の山口健太さんは、会食恐怖症克服支援協会で人と一緒に食事をすることが辛いという方の相談を多く聞いてきました。その中で、「子どもの時の食事でのつらい経験」が会食恐怖症の発端となっているケースが多いことに気づいたそうです。
そこから、食べない子の保護者向けに対応の仕方をアドバイスしたり、保育・教育関係者向けに適切な給食指導について提案を行っています。
この本の中には、レシピや調理のテクニックは登場しません。子どもたちが食事の時間に安心して過ごせるための接し方や、声のかけ方、苦手なものに慣れていくための工夫などが紹介されています。
月間給食指導研修資料
対象 小学校教師、保育者
会食恐怖症克服支援協会理事の山口健太さんが中心となり作成されている給食指導をアップデートするための資料集
対応が学べる資格
こども摂食アドバイザー
認定団体 こども偏食少食ネットワーク協会
偏食外来の大山牧子先生が監修する支援者養成講座。
「離乳がうまくいかない、食べてくれない、遊び食べ、立ち歩き、時間がかかる、少食、偏食、野菜嫌い」など、日常的に出会う相談に対して、困りごとの背景と根拠に基づいた実践的な対処法を学べます。乳幼児健診で使える予防的なアプローチ、短時間でできるスクリーニング方法も含まれています。偏食や食べない子の相談を受ける上での基本的なステップを理解できる内容になっています。